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注目のだじゃらー

注目のだじゃらー Vol.8 横山康之さん

  • お名前:横山 康之(よこやま やすゆき)
  • 生年月日:昭和43年7月4日
  • 出身地:横浜市
  • 職業:お魚イラスト工房「辻堂水族館」館長
  • 趣味:絵、熱帯魚飼育
  • 私にとってのだじゃれ:生活の糧であり、生活を潤すもの

横山 康之(よこやま やすゆき)

昨年師走のある日、たまたま訪れたショッピングモールの特設コーナーで販売されていたカレンダーに足が止まった。「君に シャチ あれ」二頭のシャチがジャンプしてハート形を描くイラストに添えられたメッセージだ。「今月のだじゃらー」第8回ゲストは、こんな“だじゃれフレーズ”入りのお魚イラスト作品を製作する工房「辻堂水族館」の横山康之館長。思わず笑顔になる、胸がジンとする、そんな作品群が生まれてきたストーリーを聞いた。

横山 康之(よこやま やすゆき)

Q :

ポストカードやカレンダーになっているお魚イラストは全部で何種類くらいあるんですか?

A :

今現在で「お魚イラストリスト」に載せているのは189種類です。

Q :

全部だじゃれフレーズ入りなんですか?

A :

いえいえ、だじゃれが入っているのは半分くらいでしょうか。全部がだじゃれだとさすがにお客さんに引かれちゃいますよ(笑)

Q :

そうですか、私は全部だじゃれ入りの方が嬉しいですけど(笑)
「辻堂水族館」って楽しいネーミングですよね。いつ頃“開館”されたのですか?

A :

2003年に勤めていたフィットネスクラブを退職して、フィットネスのメソッドを介護に活かす仕事での開業を志したのですがなかなか思うようには行かず、いろいろ鬱屈した気持ちを和らげるために好きだった絵にのめり込んだんです。
その頃は主に抽象画のような絵を木片に描いていたんですが、描いたものがたまってくると意外と場所をとるので、ふと思いついてフリーマーケットに出品してみました。
もちろん全然売れなかったんですが(苦笑)何度か出しているうちに海や魚を描いたものがポツポツと売れだしたので、「よし、好きな魚に絞って描いて行こう!」と、住んでいる辻堂の地名を冠して「辻堂水族館」と名乗り始めました。

Q :

その後は順調に作品を生み出して売上も伸びて行ったと・・・

A :

そんなに甘くはありません(笑)
ちょうどその頃に近所に大規模なショッピングモール、あ、ここ(湘南モールフィル)ですけど、がオープンして"ワゴンショップ"の出店者を募集していたんです。迷わず応募して第一号として出店しました。
当時は生活の糧を得るために、平日は夕方から深夜まで自動車部品工場で働き、帰宅後仮眠。子どもと一緒に起きて、それから絵を描く。週末はフリーマーケットやワゴンショップに出店、という生活でした。

横山 康之(よこやま やすゆき)

辻堂水族館の原点の一つであり、今回のインタビュー場所、湘南モールフィル屋上駐車場からは雪化粧の富士と丹沢の山々が望める

Q :

そこからあちこちに営業をかけてお仕事を増やしていかれたんですね。

A :

私はほとんど営業活動をしていないんです。
フリーマーケットやワゴンショップに立ち寄って下さったお客さまから声をかけていただいて、イラストのお仕事をいただいたり、新しい出店場所を紹介いただいたりしてやって来ました。中でも、江ノ島水族館近くにあったダイビングショップのオーナーさんにはとてもよくしていただきました。お店の前に小屋を建てて、ストラップやマグネットなどを販売させてもらってました。ちょうどその頃江ノ島水族館がリニューアルして新江ノ島水族館が誕生したのですが、そこの系列のお土産屋さんの中に入らないかと声がかかり、ダイビングショップのオーナーさんにも快く送り出していただいた、なんて事もありました。
そうやって様々な縁をいただいてやって来たんです。

Q :

素敵なご縁に恵まれてらっしゃったんですね。
その頃の売れ筋商品を教えてください。

A :

メインはストラップでした。あるとき、ゴールデンウィークの江の島で出店する機会があったんです。それまでの経験などから5日分の商品を持ち込んだんですが、なんとそれが1日で売り切れてしまったんです。江の島の島内は別世界でしたね。

Q :

さすが世界的な観光地ですね。売り切れと知ったお客さんは、「えーNO?しまったー」って叫ばれたりして。
いまのようなメッセージフレーズ入りのイラストはいつ頃からつくられるようになったんですか?

A :

2006年から2007年頃に「湘南絵手紙大賞」というイベントがあって、そこに応募したところ、2年連続で入賞したんです。そこで「これはいけるんじゃないか」と、メッセージフレーズ入りのポストカードをつくり始めたんです。最初の頃はだじゃれではなくて、普通のメッセージが中心だったのですが、いろいろつくって行く中で、だじゃれメッセージが浮かんで来るようになりました。最初のだじゃれフレーズは・・・エイのイラストに添えた『気合いを 入れろ えい!』ですね。

Q :

わたしはその前の『はじめての キスは 天ぷらでした』も大好きです。
イラストに添えられるフレーズも全部横山さんがつくられているのですよね。そゆう素養はどのように培われたんですか?

A :

高校時代に一瞬コピーライターを志したことがあったのですが、言葉で何かを伝えることには興味がありましたね。その頃発表された俵万智さんの「サラダ記念日」の自由な旋律にもとても感動して、言葉のリズムを意識するようになったのだと思います。

横山 康之(よこやま やすゆき)

インタビュー当日にご持参くださった「お魚ポストカード」たち

Q :

だじゃれのスキルはどのように磨かれたんですか?

A :

私は普段はそんなにだじゃれを言う方じゃないんです(苦笑)
新しいイラストを描くときには魚図鑑を眺めながらモチーフになる魚を探して、それに添えるフレーズを考えるのですが、そのときにだじゃれを使うことで、「くだらないけどあたたかい」メッセージになることにきづいたんです。さっきの『気合いを 入れろ えい!』の頃ですね。

Q :

だじゃれを使うことで、インパクトが高まってお客さんの興味を引きやすいという効果もありますよね。私もそれで引きつけられました(笑)

A :

そうですね。ストレートな表現をするよりもふんわりとやさしく伝わるメッセージになりやすいですね。

Q :

お客さまから「これがよかったよ」といったフィードバックはあったりしますか?

A :

少し前になるのですが、よくお二人でお立ち寄り下さっていた高齢のご夫婦がいらっしゃったんです。お互いを「お父さん」「お母さん」と呼び合って、それは仲のいいご夫婦でした。そのお二人がしばらくお姿を見せられないなと思っていたとき、「お母さん」がお一人で立ち寄られたんです。そして、一枚の絵を手に取って「この絵 お父さんが最後に私にくれたの・・・」といつも通りの穏やかな笑顔でしみじみと話してくださいました。

横山 康之(よこやま やすゆき)

このイラストにそんな優しくて大切な想いが込められた

Q :

胸があつくなりますね。だじゃれには凄い力がある・・

A :

いまでも出店していると、若いカップルなどが「これ、だじゃれじゃん、さっぶう!」とか言ったりしていますが、「だじゃれの力を知らない愚か者め!」などと心の中で思ったりします(笑)

Q :

お魚イラストの新作はどれくらいの頻度で生み出されているのですか?

A :

毎年6月中旬から7月末に個展を開催するのですが、そのときに10数点の新作を発表します。大体半分がだじゃれフレーズです。これ、10数点というところがミソでして、次の年のカレンダーのネタになるんですよ。
カレンダーのイラストは全部新作、というわけではないですが季節感も考えた構成にしています。

Q :

商品はどちらかの工場に生産を委託されているのですよね?

A :

いえ、全て自分でつくっています。大量生産すると作品に込められるものが無くなるような気がして。それに今の生産能力で充分生活できてますから(笑)逆にあまり注文がありすぎると追いつかなくなっちゃう。なのでホームページからの注文はわざと分かりにくくしています(笑)

Q :

それは凄いですね。
実際、どれくらいの数つくられるのですか?

A :

ストラップだけでも年間約1万個はつくります。よく売れる時など、作り置きだけでは足りなくなって、出店場所でつくることもあるのですが、描き上がったものをすぐにお客さんが買われたりすると、「あー、買わないでー」なんて思ったりしますよ。自分が生み出したもの一つ一つに愛着があるので、しばらくは手元に置いて愛でていたいという感情が湧いてくるんでしょうね(笑)

Q :

あー、なんかわかります(笑)
「辻堂水族館」に遊びに行きたかったら、どのあたりに伺えばいいでしょうか?

A :

金曜日〜月曜日は江の島シーキャンドルの展望室でやらせていただくことが多いです(*編集注:他所でのイベントなどで出店していないこともありますので、詳しくはホームページでご確認ください)。360°パノラマの素晴らしいアトリエです。ぜひ遊びに来てください!

<あとがき>

初めてお会いしたときに、差し出しただじゃれ活用協会の名刺に「これが本業なんですか?」と聞かれ、「ええ、まだ食べられませんけど」と答えたところ「私はだじゃれで食べてますよ!」と返されました(笑)
今回のインタビューでは、独立して、事業が軌道に乗るまでの苦労話をここには書ききれないほど、お聞かせいただき、とても参考になったと同時に、おおいに勇気づけられました。ここから辻堂水族館さんとのコラボが生まれてくる予感も膨らんできて、とってもよかんた、なインタビューでした。

インタビュー&レポート by にしっぽ

横山 康之(よこやま やすゆき)

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