home > 今月のだじゃらー

注目のだじゃらー

注目のだじゃらー Vol.28
渋谷 美佳 さん

渋谷 美佳 さん

  • お名前:渋谷 美佳(しぶや みか)
  • 出身地:東京都
  • 職業:会社員
  • 趣味:絵を描くこと、お笑い番組を見ること、ゲーム
  • 私にとってのだじゃれ:心を軽くするもの

今回のゲストは、大学で言語学を専攻され『ダジャレの面白さの機械学習』という卒業論文を執筆された渋谷さんです。都内で渋谷さんとお会いするなら、渋谷しかないという事で、渋谷(付近)までお越しいただきました。

Q(ひでちか) :

現在のご職業は?

A(渋谷さん) :

展示会などの空間プロデュースやコンテンツ制作などを手掛ける会社に勤めています。

Q(ひでちか) :

社会人1年目ということでしたよね?

A(渋谷さん) :

はい、卒業してまだ1年も経過していないです。

Q(ひでちか) :

「だじゃれ」をテーマに卒業論文を執筆されたとの事ですが、昔からだじゃれが好きだったのでしょうか?

A(渋谷さん) :

実は私がだじゃれ好きだと気づいたのは大学生に入ってからです。英語のスピーチコンテストを運営するサークルに入っていて、毎日かなり真面目なミーティングをする団体だったのですが、ふとだじゃれを思いつくようになり、同期の仲間に「ちょっとだじゃれ言っても良い?」と話しているうちに、周りの皆から「だじゃれ好きな人」と思われるようになりました(笑)

Q(ひでちか) :

渋谷さんが話し出すと、サークルのみんなが「さぁ〜くるぞ~」みたいな(笑)

留学
英語学科ということで、学生時代にはロンドンにもプチ留学(遊学!?)

A(渋谷さん) :

そうですね(笑)だじゃれとのきっかけは、祖父が落語好きで、子どもの頃、寝る前に毎日落語を聞いていたので、それが原因だと思います。

落語には本編に入る前に「まくら(枕)」というものがあるのですが、「ヘビから血が出て、ヘービーちーでー」と祖父が言っていた言葉が、アルファベットの「ABCD」と掛かっている事が印象的で大好きでした。

Q(ひでちか) :

へー、ビックリですね(笑)

A(渋谷さん) :

ヘビだけに(笑)

Q(ピロタカ) :

サークルの仲間の反応は、どんな感じだったのでしょう?
ヘビーローテーションですか?(笑)

A(渋谷さん) :

基本的に「寒いなぁ」という雰囲気で軽くあしらわれることも多かったのですが、その後、会話が弾むこともあったので、内心はみんな、ホッとしていたんじゃないかと。うまくいったときは「いいねぇ」とか「すごーい!」とか言ってくれたこともありました。

Q(ひでちか) :

大学に入ってから急にだじゃれに目覚めた感じなんですね?

A(渋谷さん) :

それまで小中高一貫校にいて、環境の変化はあまりなかったのですが、大学に入って新しい仲間と出会い、気持ち的にも自由な環境になれたので、それでかもしれません。

Q(ひでちか) :

大学で「だじゃれデビュー」みたいな?

A(渋谷さん) :

そうですね、大学デビューしました(笑)

大学1年生の終わりごろには、だじゃれのLINEスタンプも作りました。もともと絵を書くのが好きで、前からスタンプを作ってみたいと思っていたので、だじゃれでも作れるかもと思って。日頃、自分でも使いたいと思う「ありがとう」や「おはよう」といった挨拶で考えたら、すぐにイメージが湧いて来て、無事に審査も通りました。

スタンプ
渋谷さんの手書きによるLINEスタンプ

■LINE クリエイターズスタンプ(shibmee)

https://store.line.me/stickershop/author/127522/ja

A(渋谷さん) :

最近では、グッズ販売サイト「suzuri」で手持ち無沙汰ならぬ、「手持ちぶたさん」など、オリジナルのTシャツも作ったりしています。

Tシャツ
オリジナルTシャツ「手持ちぶたさん」(suzuriで販売中!) https://suzuri.jp/shibmeecomic/1504061/t-shirt/s/white

A(渋谷さん) :

そして、このLINEスタンプを作ったことが、だじゃれの卒業論文を書くきっかけにつながりました。

Q(ピロタカ) :

LINEスタンプから、卒業論文のスタートラインに立った訳ですね(笑)

A(渋谷さん) :

はい(笑)ただ、卒業論文も、初めから「だじゃれ」をテーマにするつもりではありませんでした。

Q(ひでちか) :

というと?

A(渋谷さん) :

当初、言語学を勉強したくて英語学科を専攻し「音楽が言語に与える影響を調べたい」と考えていたのですが、ゼミの先生と面談した際に「自分が誰よりも負けないことは何か?」質問されました。私が「だじゃれです」と答えたところ、「え?だじゃれってどういうこと?」って、先生にビックリされて…。
私がだじゃれが好きなことを話したら、「だじゃれが好きなら、それで卒業論文を書けばいいじゃん。だじゃれも十分に言語学だよ!」と先生に言われて、私も「確かにそうかも」と思って書くことになりました(笑)

Q(ひでちか) :

はぁ〜。だじゃれの吸引力ってスゴイですよね。僕も『爆笑する組織』というだじゃれの本を出しているのですが、初めてお会いした出版エージェントの人に「書けそうなテーマ」について話をしていたら、その方がだじゃれに一番反応してくれて、そこから書籍化が決まりました(笑)だじゃれが相手に与えるインパクトの強さを感じます。

A(渋谷さん) :

そうなんです。私も言語学なら何語を勉強しても良かったという状況もあり、英語学科に入りながらも、日本語の「だじゃれ」を卒業論文のテーマにすることにしました(笑)

卒業論文
こちらが伝説のだじゃれ卒業論文!?これは殿堂入りモノです!

Q(ピロタカ) :

卒業論文のタイトルは『ダジャレの面白さの機械学習』との事なのですが、そこに行き着いた経緯について、教えていただけますか?

A(渋谷さん) :

だじゃれは、つまらないとか、寒いとか、面白さを求められる事が多く、自分が面白いと思って言った渾身のだじゃれも、全くウケない経験が多々ありました。そこで、どのような指標が人間の評価に影響が与えているのか知り、多くの人から面白いと思われるようなだじゃれを作りたいと思いました。

そして「だじゃれ」に関する先行研究を見つけて、これはもっと良くできるんじゃないかと先生と相談し、人工知能(AI)や機械学習と組み合わせてもっと実用的で役立つものにできるのではないかなと思い、勉強していった感じです。

Q(ひでちか) :

だじゃれに「先行研究」が存在するというのが驚きですね(笑)

A(渋谷さん) :

先行研究では、母音と子音の類似度の関係性について書かれていたのですが、表現パターンに不十分なところがあると仮説を立て、独自に「TPS分類法」を考案しました。

Q(ひでちか) :

TPS分類法??

A(渋谷さん) :

【T】がTarget(種表現)、【P】がParonomastic(変形表現)、 【S】がShadow(変形表現の裏)の略です。

例えば、「大根は野菜のだいこんく柱(大黒柱)です」の場合、次のようになります。

大根【T】は野菜のだいこんく【P】柱(大黒【S】柱)です。

Q(ひでちか) :

なるほど。協会では、シンプルに【T】のことを「素材語」、【P】のことを「掛詞」と呼んでいますが、そこにさらに【S】が入るんですね。

A(渋谷さん) :

そうですね。この【S】=Shadowまで考慮するところが、先行研究との大きな差です。

Q(ひでちか) :

だじゃれなのに本格的ですね(笑)

A(渋谷さん) :

このTPSのパターンに応じて123個のだじゃれのサンプルを用意し、174人の老若男女に「このだじゃれは面白いですか?面白くないですか?」というアンケートを取り、男女別・年代別に集計しました。そして、機械に学習させた結果と、人間の回答がどのくらい一致するかの実験を行いました。

卒業論文
卒業論文
論文に掲載された図表の一部。解説は省略します・・・

Q(ひでちか) :

だじゃれなのに本格的ですね・・・(2回目w)
最終的にどのような結果が得られたのでしょう??

A(渋谷さん) :

最終的に「面白いだじゃれの鉄則はこれである!」と言えるようなはっきりした結果は出ませんでしたが、TとPがいかに似ているかや、文章として成立しているかなど、面白さの判断に大きな影響を与えている部分が明らかになりました。

たとえば、先ほどの「大根は野菜のだいこんく柱」、正直イマイチだな、と思いませんでしたか?あれはTとPが一致していなかったので、面白いと思われにくいだじゃれだったんです。

結局、面白いだじゃれに一番大切なのは、いかに文脈に合っただじゃれをスピーディーに言えるか、だと分かりました!(笑)

Q(ひでちか) :

確かに、即興性もだじゃれの大事な要素の一つですね!

卒業論文を書く前と書いた後で、渋谷さんと「だじゃれ」の関係性に何か変化はありましたか?

A(渋谷さん) :

そうですね。自信をもってだじゃれが、「好き」と言えるようになりました!

Q(ピロタカ) :

就職活動でも、だじゃれの研究は役立ったのでしょうか?

A(渋谷さん) :

はい、とても役に立ちました(笑)
「好きなことをビジネスや学問にも繋げている」とアピールするために、どの会社の面接でもだじゃれについては話していました。最終的に私のだじゃれ好きな部分も理解してくださる会社に入りたいと思っていたので、今勤務している会社でも最終面接でLINEスタンプや卒業論文について熱く語ってしまいました(笑)

Q(ピロタカ) :

面接する側は、インパクトがあったでしょうね。

A(渋谷さん) :

入社してからも、プレゼンの時にだじゃれを使った覚えやすいコンセプトを使って印象を残したり、だじゃれは働き始めてからもとても役に立っています!

Q(ひでちか) :

では最後の質問です。渋谷さんにとって「だじゃれ」とは?

A(渋谷さん) :

私はだじゃれには、みんなの心を軽くする不思議な力があると思っています。

現在、コロナ禍で職場の上司や同僚、直接会うことが難しい状況ですが、だじゃれを交えた雑談でコミュニケーションが円滑になると感じることがあります。先日も忙しい仕事の合間にパソコンの予測変換ミスで「確認いたしました」が「角煮にしました」に変換され、心がほっこりしました(笑)

だじゃれは、寒くて面白くないとネガティブなイメージを持っている人も多いですが、使い方次第で日々の生活をハッピーにする事ができます。卒業論文のアンケート結果からも、「だじゃれ好き」に男女差が無いことが分かったので、これからもだじゃれをたくさん発信し続け、だじゃれの魅力を皆さまに伝えていきたいと思っています。

Q(ひでちか) :

いいですね。だじゃれの抵抗をOFFして、「テイク・オフ!」みたいな(笑)

A(渋谷さん) :

そうですね。これからも情報発信を続け、テイクオフしていきたいです(笑)

Q(ひでちか) :

本日はありがとうございました!



<あとがき>

渋谷さんから協会宛に「だじゃれで卒業論文を書いたので読んで欲しい」という主旨のメールをいただいたときの衝撃は、まさに笑劇ものでした(笑)歴代の「注目のだじゃらー」ゲストの中でもダントツの最年少。実際にお会いしてみて、「平成生まれ」の言葉に平静を装うのに必死でしたが、だじゃれの話が始まればあっという間に意気投合!今回のインタビューを通して、若い人の中にも「だじゃれ好き」な人がいることを知れて、大きな勇気をいただきました。世代を超えて、だじゃれについて熱く語り合える仲間との出逢いに感謝です!!

インタビュー

インタビュー&レポート by 鈴木ひでちか&中島ピロタカ


☆渋谷 美佳さんのオリジナルグッズ販売サイトおよびインスタグラムは、以下よりご覧いただけます!


◇suzuri

https://suzuri.jp/shibmeecomic/


◇インスタグラム

https://instagram.com/shibmeecomic?igshid=1jzu7h17r4tz1

BACKNUMBER

 

あなたの街の「だじゃらー」募集中!

日本だじゃれ活用協会では、だじゃれを日常生活に活かし、地域や社会の平和に貢献されている素敵なだじゃらーを募集しています。自薦、他薦、問いません。どうぞお気軽にご応募ください。

お問合せはこちら