注目のだじゃらー Vol.37
将棋士 豊川孝弘七段
- お名前:豊川孝弘
- 出身地:東京都杉並区
- 職業:棋士(将棋)
- 趣味:NY(入浴)とドライブ
- 私にとってのだじゃれ:味付け海苔
今回のゲストは、将棋界のだじゃれ王こと豊川孝弘七段。豊川七段の「だじゃれ×将棋知識」の大盤解説は将棋ファンからも大人気。だじゃれを使い始めるきっかけや意識していることなど普段なかなか聞けない話を稀代の将棋士に正直に、大盤振る舞いいただきました!
だじゃれは脳ではなく体が覚えて反応!?
Q(ひでちか) :
まずはだじゃれの原点についてお聞かせください。
A(豊川さん) :
小さい頃におじさんたちが将棋を指しながらだじゃれを言っていたのを聞いていたからですかね。それから自然と将棋中は出てくるようになりました。今もシニア向けの将棋講座を行っていて、やっぱり将棋は頭を使うので、どうしても「う〜ん」と考えこんでしまう。
そんな時に「両取りヘップバーン」などポロっと将棋のだじゃれを言っています。笑いになることもありますし、たとえ笑いにならなくてもその場が少しでも和めば良いなと思っています。
心掛けているのは本当に邪魔にだけはならないようにと。(笑)
▲将棋講座での様子。緊張と緩和で将棋だじゃれは喜ばれるのだろう
Q(ひでちか) :
良いですね。だじゃれ活用協会もまさに同じように考えています。
だじゃれを使われるのは主にそういった講座での場面が多いですか?
A(豊川さん) :
そうですね…。ただその場の雰囲気やコンディションとかそういったものにも左右されますね。僕の場合は考えて出しているというよりは、流れの中で自然と言ってますね。
Q(ひでちか) :
意外です。解説のお仕事で使われているイメージだったので、場面やシーンによってストックしてタイミングを見て仰ってるいるのかと思っていました。
▲大盤解説での様子
A(豊川さん) :
恐らくそういったものもありますが、講座や解説の時は無意識に体が反応して言っちゃってるんでしょうね。(笑)
ただ2017年に書籍(『豊川孝弘の将棋オヤジギャグ』)を出版した時はだじゃれフレーズを120個も紹介するということで、さすがにメモしたり、書き出したりしましたね。
▲この本を読めば将棋とだじゃれ(オヤジギャグ)、どちらの知識も両取りだ(出典:Amazon)
A(豊川さん) :
あと意識してだじゃれを発して記憶に残っているものとしては、2015年に西武ドームを貸し切って、トヨタの車を使った巨大将棋盤イベントがあります。
ゲストにテリー伊藤さんや古田敦也さんなど将棋を指せる有名人もいる中で大盤解説をさせてもらって。
テリー伊藤さんが良いコメントを言ったときは「それテリーグッドです!」と返しましたね(笑)
▲こなんて画期的な将棋イベント。これは正気の沙汰でない!?(出典:トヨタHPより)
Q(ひでちか) :
ご自身のお気に入りのだじゃれフレーズはありますか?
A(豊川さん) :
誰も傷つけないような、元気が出るような挨拶は好きですね。
「おはようございマッスル」や「おはようございマンモス」、とか将棋でも勝負メシみたいな企画で食レポの機会があるので、美味しいものを食べて「マウイ島」とか…。
▲こ豊川さんのTwitterより引用。これは間違いなく「マウイ島〜」とうなったに違いない。
A(豊川さん) :
そういう単純に気持ちがよいもの、押しつけがましくないものを使うようにしてますね。
情報番組で将棋解説を行った後に大勢のスタッフが見送ってくれる時もただエレベーターに乗って「どうも」と挨拶するのも味気なくて嫌じゃないですか。
なのでエレベーターが閉まる寸前で「センチメンタルジャーニー」って笑顔で言ってみたり。(笑)
▲こちらも豊川さんのTwitterより引用。周りをハッピーにする投稿だ
Q(ひでちか) :
豊川さんのお話を伺っていると、「重苦しい雰囲気の時に、周りの人に明るい気持ちになって欲しい」という想いが伝わってきますよね。
書籍を拝見していて「プロミス」とか私は好きでした。プロ棋士がミスすることを正面からは指摘しづらいと思うのですか、それをすごくマイルドに伝えていらっしゃいますよね。
A(豊川さん) :
やっぱり棋士もみんな一生懸命指しているので、それを否定するのは違うと思うんです。ミスしたことをミスって言っちゃうと残酷なので、そこは気を遣ってましたね。
Q(ひでちか) :
他にも「好打シャーミン」や「と金ちゃん」など本当に面白いフレーズがたくさんありますね!
▲まずは人名シリーズ。
▲形勢シリーズ。拮抗マンや阿寒湖は将棋だけでなく日常でも使えそうだ
▲最後は指し手シリーズ。気になった人は是非、出典書籍を購入してほしい
豊川さんは「重ね型」の名手
Q(ひでちか) :
ところで、豊川さんのだじゃれって私の中では「重ね型」と呼んでいるパターンがすごく多いなと思っているんです。
A(豊川さん) :
重ね型ですか?是非、お聞きしたいです。
Q(ひでちか) :
だじゃれには「重ね型」と「リピート型」の2種類の型が存在します。「重ね型」は「おはようございマンモス」のように言葉の一部が重なっているもので、いわゆる「茶魔語(ちゃまご)」の世界です。一方の「リピート型」は助詞を使って音が似た言葉を繰り返すもので「猫が寝ころんだ」「布団が吹っ飛んだ」などで、大半のだじゃれはこちらになります。
▲だじゃれには2種類の型があることを知っていると「そうなんだ、洒落てるね。」と言われるかも
A(豊川さん) :
僕もだじゃれには「リピート型」のイメージがありました。
Q(ひでちか) :
でもお伺いしていると、豊川さんは100%「重ね型」なんですよ。どっちが良い悪いではなく流派の違いみたいなもので、重ね型は言葉的には文字数が少ないのでシャープな印象です。これは無意識ですか?
A(豊川さん) :
無意識ですね。今まで意識していなかったですが、だじゃれってやっぱり深いですね。
Q(ひでちか) :
深いですが、不快ではないですよね(笑)
A(豊川さん) :
今のはリピート型ですね。上手い、鈴木さんだじゃれ博士ですね~。
Q(ひでちか) :
豊川さんも重ね型の名人です!
▲インタビューはとても和やかな雰囲気でした!
豊川さんは「重ね型」の名手
Q(ひでちか) :
今後、何かだじゃれに関してお考えのことはありますか?
A(豊川さん) :
細々と人に迷惑掛けないように喜んでもらって将棋を楽しんでもらいたい、そこだけですね。
Q(ひでちか) :
そこはもう一貫されてますよね。皆さんに楽しんでもらってレッスンを受けた人にも成長してもらいたいと。
A(豊川さん) :
そこはブレードランナー(ぶれとらんな)ですね(笑)
Q(ひでちか) :
ブレードランナー、素晴らしい!
最後に豊川さんにとってだじゃれとは何ですか?
A(豊川さん) :
「味付け海苔」ですね。講座で人に教えるとき、大盤で解説するとき、人とコミュニケーションをするタイミングでペタッとだじゃれがあると、関係性が良くなるものです。
Q(ひでちか) :
味付け海苔良いですね!白飯を包み込むように素材を活かしている感じがします。
A(豊川さん) :
それでいて使えばノリノリになれますからね。(笑)
Q(ひでちか) :
豊川さんが周りの方をノリノリに楽しくなってもらうためにだじゃれを使われていることがとってもよく分かりました!本日はありがとうございました。
A(豊川さん) :
こちらこそありがとうございました。センチメンタルジャーニー!!
<あとがき>
イインタビューで印象に残っているのは一貫した豊川さんの周りを楽しませるブレートランナー(ぶれとらん)な姿勢。直観で鋭く繰り出される「重ね(かっさね)型」のだじゃれで、これからも将棋界の話題をかっさらって行かれることでしょう!ますますのご活躍楽しみにしております!
インタビュー by 鈴木ひでちか
レポート by 電気とデニム
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