注目のだじゃらー Vol.26
ダジャレコード 井上 裕一さん
- お名前:井上 裕一(いのうえ ゆういち)
- 出身地:福岡県
- 職業:デザイナー
- 趣味:バスケと登山
- 私にとってのだじゃれ:知的活動
今回のゲストは、超からあげクンや悪魔のおにぎりなど、皆さんが一度は目にしたことがある作品を数々世に送り出してきたデザイナーの井上さんが代表を務める「ダジャレコード」の活動について取材してまいりました。
Q(ピロタカ) :
ダジャレコードでは、主にどのような活動をされているのでしょうか?
A(井上さん) :
ダジャレコードは、ダジャレの文化的価値をアップデートする活動をしています。主にTシャツの販売やイベント企画。寒いダジャレを使ってクールなソリューションを提案しています。
Q(ピロタカ) :
ダジャレコードを立ち上げたキッカケについて教えていただけますか?
A(井上さん) :
もともとダジャレが好きだったという事もあるですが、ダジャレが好きなコピーライターの方とたまたま出会って一緒に仕事をしているうちにダジャレからアイデアが生まれて、仕事につながっていることが多いことに気がつきました。
意識してみると、街中にあるポスターのキャッチコピーや商品のネーミングなど、ダジャレが使われていることがよくあります。ダジャレを使うことで、語感がよくなるので覚えやすくキャッチーになるからだと思います。
世間では「ダジャレ」=「くだらない」という認識で終わっているので、そこがもったいないなぁと思って、ダジャレコードを立ち上げました。
Q(ピロタカ) :
もったいないと感じるダジャレの魅力みたいなものはありますか?
A(井上さん) :
ダジャレとは、大げさにいえば新しい価値観の創造です。これまで結びつくことがなかった言葉と言葉を反応させ、新しい関係を生み出したり、1つの音だけで2つの意味を伝えたりする点に大きな魅力を感じています。
Q(ピロタカ) :
井上さんは普段から仕事や日常生活でもダジャレを言われるのでしょうか?
A(井上さん) :
言いたいなぁと思っても言わないですね。でも、頭の中でダジャレの絵が浮かんでいることは結構あります。
ダジャレコードで一番最初にやったのは、“ダジャ絵Tシャツ”で、「アルミ缶の上にあるみかん」という誰もが知ってる寒いダジャレをクールに撮影しました。ダジャレは、言葉として聞いたことはあっても、みたことがないのでそれを視覚化するのが面白いと思いました。また、寒い駄洒落だからこそ、ライティングを工夫して写真としてのクオリティを高いほど、ギャップが生まれるのでより表現として、クールにみえるのではと考えました。
Q(ひでちか) :
このアルミ缶はその時の写真の実物ですか?
A(井上さん) :
このみかんはプラスチック製ですが、撮影では本物のみかんを使いました。
Q(ピロタカ) :
このアルミ缶は中身が入ってそうですね。
A(井上さん) :
実は、シルバーの印刷する前の状態のアルミ缶を探したのですが、アルミ缶工場に電話しても売ってなくて、最終的に自分でやすりを使って磨いて削りました。
Q(ひでちか) :
え、削った!?(爆笑)。
A(井上さん) :
アサヒスーパードライって、あれほとんど銀じゃないですか?あれをこすって印刷を削り落とすという。
Q(ピロタカ) :
みかんは見つかって、アルミ缶はみっかんないっていうのも面白いですね(笑)。
A(井上さん) :
他にも、たくさんあるのでご紹介させてください。
クールな「だじゃれ絵」の数々。答え合わせはこちらから
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お土産にいただいたペットボトル。ダジャレがオシャレなオブジェに早変わり!
Q(ひでちか) :
左上は「カエルが帰る」で、次の絵は、もしかして「コンドルがめり込んどる」ですか?デザイン性が高くてダジャレっぽくないのが良いですね。
A(井上さん) :
そうなんです。無駄な要素はかぎりなく削ぎ落して、ダジャレをクールに表現しています。暑い夏を寒いダジャレでクールにオシャレに過ごしていただければと思っています。
Q(ひでちか) :
確か、マスクも販売されていましたよね?
「マスクメロン」ならぬ「メロンマスク」!!
A(井上さん) :
はい。マスクが手に入らなくなる前に、人々の顔から笑顔が少なくなっていたので元気づけたいなと考えていたところ、ふとダジャレを思いついて作りました。少ないロット数だと製造費が高くなってしまい、転売しているみたいな価格になってしまったのですが、マスクの無い時期に販売したこともあり、ダジャレに興味が無い方にも買ってもらえたみたいで嬉しかったです。
Q(ピロタカ) :
誰かに言われるまで、ダジャレとは気づかないとかありそうですね。
A(井上さん) :
次回は、使い捨てタイプではなく、洗えるタイプの“高級メロンマスク”を作りたいと思っています(笑)
Q(ピロタカ) :
井上さんは、他にもダジャレのイベントも企画されているんですよね?
A(井上さん) :
はい。「銭湯のピアニスト」というのをやりました。もともと知り合いにクラシックのピアニストの方がいて、クラシックの敷居を下げるような何かイベントをやりたい話を聞き、その時、パッと頭に浮かんだのが「銭湯のピアニスト」というタイトルでした。
「銭湯」×「ピアノコンサート」の奇跡のコラボレーション!
Q(ピロタカ) :
「銭湯のピアニスト」って面白いですけど、なかなか実際にやろうという発想にならないと思うのですが、井上さんのその行動力がスゴイですね。銭湯などを経営しているお知り合いの方とかいらっしゃったのですか?
A(井上さん) :
銭湯には伝手は無かったです。1件1件電話して断られたり、廃業しているところもあったり、ちょっと大変でしたが、それでも良いですよと言ってくれる場所を見つけて、貸し切りにかかるイベント費用はクラウドファンディングで集めました。
Q(ピロタカ) :
実際にやってみて感じた事とか周囲からの反響はいかがでしたか?
A(井上さん) :
場所に関しては、銭湯って天井が高く、タイルやコンクリートなどによって音が響くし、ピアノの高さとかもちょうど良くコンサートをやる環境としてとても適しているなと思いました。
銭湯という日本の伝統文化と西洋の伝統的な音楽の2つが組み合わさって、新しいものに生まれ変わるんだと感じ、ダジャレもバカにできないことを改めて実感しました。
周囲からの反響としては、クラシックライブに行ったことがない方に来ていただき、「面白いね〜!」「良いね〜!」とか言ってもらうことができ、クラシックの敷居を下げることに貢献できたと思います。
Q(ひでちか) :
そこまでさせる井上さんの行動の原動力は何ですか?
A(井上さん) :
ダジャレコードでは、「FOOL IS COOL」という言葉を掲げていています。「スベることは挑戦することであり、クールである」と言っていて、そんな想いから、今年はチャレンジして失敗した人へ向けて応援するメッセージを発信したいと思い、東京大学の合格発表の日に合わせて「スベった受験⽣を応援するポスター」を東京メトロ東⼤前駅に交通広告に出させていただきました。
中島みゆきさんの「ファイト」という曲のサビの部分「ファイト!戦う君の唄を 戦わない奴らが笑うだろう」という歌詞が好きで、挑戦しているけど成功していない、スベっている人に勇気を与えられたらと考えています。
「そんなバナナ!」と目を引く受験生応援ポスター
Q(ピロタカ) :
この広告を見た方の反応はいかがでしたか?
A(井上さん) :
実は、今年はコロナウイルスの影響により、本郷キャンパス内での合否結果の掲示が中止になってしまい受験生に直接ポスターを見てもらうことは叶いませんでした。
しかし、そのことをSNSでつぶやいたところ、多くの方から反応をいただき、WEBメディアにも取り上げていただきました。「広告自体もスベってしまった」というのが、たくさんの方から共感や応援してもらえる結果につながったのだと思います。
5500を超えるリツイートで大反響となったツイートがこちら!
本日、東大前駅にスベった受験生を応援するポスターを出しました。しかしなんと!コロナウイルスの影響で東大校舎での合格発表は中止!このポスターが受験生に見られることはありません…。まさかこのポスターがスベるとは…。「すべてはスベってから。」誰かの勇気になれるように僕はスベり続けます。 pic.twitter.com/q1j3Nd0IAP
— 井上裕一|悪魔のデザイナー (@inoue_ych) March 4, 2020
Q(ひでちか) :
スベって、全て丸く収まった訳ですね(笑)。
今後、「だじゃれ」でやってみたいことはありますか?
A(井上さん) :
ダジャレは広告でクリエイティブな発想を生むツールとして使われていることが多いので、ダジャレの効果や活用法みたいな講座をやりたいなと思っています。
また、今後も東大受験生を応援するポスターのようにダジャレで熱いメッセージを発信するなどして、ダジャレの新たな価値を世の中に示していけたらと思っています。
<あとがき>
今回、注目のだじゃらーのインタビューに自ら応募してきていただいた井上さん。
ダジャレ満載で来〜るかと思いきや、終始クールにダジャレに対する独自の理論や美学についてお話いただきました。頭はクールでも、ダジャレに込める心は熱い。高度なダジャレを閃いたら即実行に移すダジャレ行動こそ、ダジャレコード井上さんの真骨頂と思える時間でした!!
インタビュー&レポート by 中島ピロタカ&鈴木ひでちか