Vol.6 涌井家ご夫婦
- お名前:涌井 慎(わくい まこと)
- 生年月日:昭和55年1月 4日
- 出身地:滋賀県長浜市
- 職業:FM京都 番組ディレクター
- 趣味:ライブ(音楽)
- 私にとってのだじゃれ:コミュニケーションツール
- お名前:涌井 あきこ(わくい あきこ)
- 生年月日:昭和51年5月 16日
- 出身地:大阪府羽曳野市
- 職業:出版・広告業
- 趣味:お酒
- 私にとってのだじゃれ:癒し
「今月のだじゃらー」第6回ゲストは、今年初めに「だじゃれ弁当」でネットニュースやテレビで大いに話題になった、涌井家ご夫妻です。当初はご連絡先も分からないところからのスタートでしたが、お住まいの京都市内で感動のご対面となりました!一目見ただけで、ほっこり温かい笑いがこみ上げてくる「だじゃれ弁当」。その感動の誕生エピソードを伺ってきました。
Q :
Yahoo! ニュースで初めて「だじゃれ弁当」のことを知った時は、とてもワクワクしたのを今でも覚えています。こうして直接、お話を伺うことができて本当に嬉しいです。早速ですが、この「だじゃれ弁当」、いつ始められたんですか?
A(慎) :
2014年の1月からです。最近、ナンバリングを始めたのですが、全部で383になりました(2015/10/23現在)
Q :
スゴイですね!毎日作られているんですか?
A(あ) :
そうですね。主人の弁当が必要な平日は、月曜から金曜まで毎日ですね。
Q :
だじゃれ弁当を作り出したきっかけは?なぜ始めようと思われたのですか?
A(あ) :
主人の実家から小鮎の佃煮(滋賀の名物)を沢山もらって、お弁当に入れようと思ったんです。そのまま、ご飯の上に乗せるのも面白くないので、“アユ”って描いて並べたら面白いんちがうかな~と思って。そんな遊び心がきっかけですね。
そうしたら、(主人が)思った以上に面白がってくれました。「あ!こんなん面白がってくれるんや」と思って、次の日も何かしてみようかなというところから始まったんです。
記念すべき第1作「アユ」。頭からキレイに並べられています。
A(慎) :
弁当のフタを空けてビックリしましたね。「なんかあるなー」と思ってよく見たら“アユ”って書いてあって(笑)。面白かったので、写真撮ってFacebookへあげたんです。そうしたら、いつもは10個くらいしかつかない「いいね!」がその時は50個くらいついて、これまたビックリしました(笑)妻に「面白かったわぁ~」って言ったら、次の日は昆布で“コンブ”って描いてありました(笑)それからしばらくして10日くらいしたら、海苔で“ネタぎれ”となってました(笑)
Q :
そこからどうやって脱却したんですか?
A(あ) :
だじゃれを使うようになったんです。最初は確か“キューリー夫人”だったかと・・・。
Q :
だじゃれが弁当を続けるきっかけになった訳ですか?
A(あ) :
そうなんです。そうか、「この方法があったか!」と思って、そこからはトントントンと。
私は大阪出身なんですけど、うちの父がスゴイだじゃれ好きで、普段の日常会話の中でかなりだじゃれを入れてくる家庭だったんです。だから、私にもだじゃれ脳があって(笑)
Q :
だじゃれのサラブレッドですね(笑)
A(あ) :
そうですね、小さい頃からだじゃれに親しんでいたというのもあるし、私は元々ライターなので、結構、言葉遊びが好きなんです。
Q :
これまでのヒット作にはどんなものがありますか?
A(慎) :
最近は、ブログ(http://bento-of-wakui.seesaa.net/)で土日に過去の傑作集を紹介しています。
やっぱり最初の“アユ”が印象的でしたね。あとは、「オダギリジョー」にかけておにぎりジョーとか。他には「叶姉妹」にかけた叶シュウマイ、コアラがユーカリじゃなくてゆかりにつかまっているやつとか。
オダギリジョーもビックリの「おにぎりジョー」だじょー
「叶シューマイ」、かの叶姉妹も何も言うまい
ユーカリではなく、「ゆかり」につかまるコアラ。愉快です(笑)
Q :
私は「インゲンだもの」がすごい好きです(笑)
あいだみつをの「にんげんだもの」を文字った「インゲンだもの」
A(あ) :
あー、その辺から私も「だじゃれいいかも!」と思い始めた気がします。
実際のものとかけ離れていればいるほど、主人は面白がってくれます
Q :
だじゃれって共通点が音だけじゃないですか。だから全然違うもの同士を結び付けられるのが面白いですよね。
A(慎) :
たまに「一文字しかおうてへんやん!」って時もあります(笑)
Q :
それにしても、2年近く毎日欠かさずというのは大変じゃないですか?
A(あ) :
逆に普通の弁当だったらここまで続かなかったと思います。趣味というか、日課みたいな感じですかね。何かネタを思いついたら作らずにはいられないんです。初めのネタ切れした頃は考えるのがしんどくって、「いつ止めよう、いつ止めよう?」っていう状態だったんですけど、だじゃれに切り替えてからはナンボでも湧くようになりました。これ位だったら続けられるかなーと思って、今に至ってます。
Q :
やはり、だじゃれがピンチを救ってくれたと?
A(あ) :
そうですね。私、だじゃれだったら、ナンボでも思いつくわって思えました。それこそ小学生の時に友達と歴史の教科書なんかを見ながら「キューリー夫人って、キュウリ好きなんかな?」とか言ってたノリです。なんかその無駄な感じが面白いというか。あー、ハイハイみたいな。あんまり高尚なものでもなく、愛情とかそんなんでもなく、ただ単に思いついたら言いたい小学生や中学生のノリですよ。
Q :
肩の力が抜けた感じがいいですね。
だじゃれの「だ」って漢字だと、駄菓子の「駄」って書きますよね。「駄菓子」と「お菓子」を比べた場合、駄菓子の方が安っぽいけど、敷居が低くてみんなに親しまれている感じがする。「駄洒落(だじゃれ)」も仰るとおり、高尚でなくベタな感じがいいですよね。
A(慎) :
そういう意味では、そんな気取った弁当じゃないし、そもそもブログにアップして人に見せるなんて想定してなかったです(笑)
A(あ) :
そうそう、だから写真の画質がめっちゃ悪かったり、お弁当が寄ってたりとかね(笑)
A(慎) :
こっちの方が何のためらいもなく食べられますから(笑)
A(あ) :
普通に晩ご飯の残り物とか、朝ちょっと作った物を詰めるとか、ごく庶民的な弁当です。特別美味しい訳でもないし(笑)
Q :
ネタはどうやって思い付くんですか?
A(あ) :
例えば、仕事帰りのスーパーで食材を見て思い付く時もありますし、仕事中にふと入ってきた言葉で「あっ」って思い付くこともあります。最近は、反射的に作るようになっていて。おかずを全部作っていって、並べながら詰める時に「今日はこれで行こう!」みたいなこともあります。
Q :
達人の域ですね!
A(あ) :
そんなええもん、違うんです。かかっている時間は、普通のお弁当プラス考える時間も含めて5分位ですかね。そんなに手間がかかっている訳ではないんです。
Q :
ネタ帳を作ったりしているんですか?
A(あ) :
思い付いたものはiPhoneに入れるようにしてますけど、今は2~3個あるくらいで本当に困った時に使う程度です。ノルマにしていた時はしんどかったですけど、今はホント軽く考えていて、楽しんでやっています。
インタビューはお子さんもご一緒に、晴天の京都・梅小路公園にて
Q :
お二人にとって、だじゃれ弁当はどんな存在ですか?
A(慎) :
やっぱり毎日、楽しみですね。「今日は何だろう?」と。こういう会話をしてたからコレとか、何の前触れもないんですよ。予想ができないんです。たまに、節分の時に豆を使ったりして季節感のあるネタを入れてくる時もあるんですけど、基本的には予測不能。「こ~来ましたか~!」みたいな、そういうのが毎日楽しいですね。特にちょっとひねった難しいのが分かった時って、感性というか面白いと思うポイントがシンクロするところがあって、そこが嬉しいですね。
Q :
クイズの「アハ体験」みたいなものですね。
A(慎) :
そうです、そうです!「あ、これやな~!!」みたいな。そういう時が一番嬉しいですね。
でも全く分からないこともたまにあって、そういう時は「今日のなんやったん?」って連絡することもあります(笑)
Q :
いいですね。一つの夫婦間のコミュニケーションツールですね。
A(慎) :
そうですね。だいたい取材されると、皆さん「だじゃれが夫婦のコミュニケーションツールになっている」とキレイにまとめはります(笑)でもそんなに美しいものでもなく、ただ「面白い」と思っていることを表現しているだけ。僕たちが「面白い」と思っていることをネットにあげてみたら、たまたま興味を持ってくれた人がいただけなんです。
A(あ) :
主人が喜んでくれたら、まぁえぇかなと思います。そんな美しい話でも何でもなく、メッセージ性も何もないです。だじゃれって思い付いた時に「どやこれ?面白いんちゃうかー?」みたいに思わず言ってしまう、そんな感じですよね?それを主人が面白おかしくブログで紹介してくれて、それを「あ、分かってるなー」と思って毎日、見るのもの楽しみです。
主人は帰ってくるのが遅くて、私は子ども達と一緒に寝てしまうので、普段、ほとんど接する時間はないです。一日ぜいぜい5分か10分、それも業務連絡だけみたいな。そんな中、この弁当ネタがしょーもない話を集約した「楽しい無駄話」になっています。
Q :
「楽しい無駄話」、いいですね!
A(あ) :
そうですね。弁当を始めるようになってから何となく家庭が楽しいし、周りからも「あの夫婦面白いね」と言われることが増えました。そうするとやっぱり嬉しいですね。
お笑いの感覚が一緒と思って結婚したのもありますが、すれ違いの生活が続いてたら「あの人じゃなくてもいいや」ってなりかねないと思います。そういう意味では、だじゃれ弁当はそれを再確認できる感じでいいんちゃうかなと思います。
Q :
だじゃれ弁当は今後も続けられる予定ですか?
A(あ) :
そうですね。5年、10年くらい経った後に、「まだやってたんかい!」って言われるみたいな(笑)
A(慎) :
「あの人は今!?」みたいに(笑)別にそこまで話題になっている訳でもないですけどね(笑)
A(あ) :
今みたいに、面白がっているうちですよね。私も楽しんでいるうちは続けたいですけど、飽きたらもうスッパリ止めると思います(笑)
<あとがき>
テレビで初めて「だじゃれ弁当」を目にした時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。その生みの親である涌井ご夫妻にお会いできた今回の京都遠征は、私にとって一大イベントでした。
軽いノリで思い付けるからこそ、涌井家の弁当が作られ続けられる秘訣となっているだじゃれ。「楽しい無駄話」として、お仕事・子育てに忙しいお二人の日々のつなぎ役となっているだじゃれ。涌井家の弁当は、だじゃれが私たちの日常生活にゆとりと潤いをもたしてくれる存在であることを見事に具現化してくれています。ご夫妻と京都でお会いできた今日という日は、私にとって一生の思い出となりそうです。
インタビュー&レポート by 鈴木ひでちか
ユーモア満点の長男さすけ君(左)。だじゃらーのDNAが受け継がれているのかも?